朝鮮前期の陶工・李勒山が丹精込めて作った新たな形の陶磁祭器について性理学者・金宗直が書いた詩が伝わっています。
彼の詩は、金属祭器を模倣して天、地、象、牛など意味ある自然物をかたどった粉青沙器の祭器を思い浮かばせます。
自然物を形象化した様々な陶磁祭器は、最高権力を象徴する中国の古銅器を手本に、時代を反映しながら多様な姿に変化していきました。それはまさに国家の礼制の象徴となるものでしたが、そこには造形の無限の可能性が秘められていました。
企画展「新様祭器:天と地をつなぐ陶磁器」は、古銅器形の陶磁器が登場した高麗時代から、規範を重視した朝鮮時代まで、韓国陶磁の流れの中で新たに登場した陶磁祭器に注目し、韓国陶磁の位置づけについて考えます。祭器をモチーフにした芸術作品も展示され、伝統陶磁の新たな未来を展望する機会となるでしょう。
本展では、陶磁祭器の時代別の変化を3部構成で紹介しています。「第1部:いにしえに倣って立て直す」では、礼制改革を行って中国の制度を継続的に反映していった高麗の陶磁祭器の変化に注目し、高麗社会における陶磁器の位置づけを考察します。「第2部:整った法式を実践する」では、朝鮮初期の礼制確立後、国家祭礼の中で陶磁祭器が使われた状況を類型別に分け、儒教の実践や陶磁祭器の普及について紹介します。
「第3部:新たな視点、祭器の再発見」は、今日、保守的な性格を脱して芸術として生まれ変わった陶磁祭器や、祭礼に対する意識に焦点をあてています。
京畿道の代表的な遺跡である龍仁西里窯址の高麗白磁祭器のほか、2021年に国立博物館に寄贈された故李健熙(イ・ゴンヒ)サムスングループ会長の陶磁名品コレクション、国の祭祀を執り行った伽倻津祠の粉青沙器の祭器、ユネスコ世界遺産に登録された道東書院の金属祭器など、陶磁祭器に関する資料を一度にご覧いただけます。これらの資料は京畿陶磁博物館のモバイルアプリでもご紹介しています。また、メディアアート「新様祭器」、デジタル体験コンテンツ「祭器の模範、宗廟祭器」、情報弱者のための「易しい展示解説」など、陶磁の歴史や展示品について理解を深められる多彩なプログラムをお楽しみいただけるようになっています。