本展は、開港から朝鮮末期、大韓帝国期、日本植民地時代を含む近代期に韓半島で生産され、流通した陶磁器を中心に近代陶磁全般に注目し、この時期に派生した産業や、芸術としての陶磁の概念が生まれる過程を振り返るために企画されました。
展示は、
第1部「朝鮮の陶磁、手工業から産業へ」と第2部「帝国主義の時代、実用の陶磁から創作の陶磁へ」の2つのテーマから成っています。
第1部は、分院磁器株式会社(1876年の開港後に分院が民営化された)に移行する過程の分院陶磁の近代化を取り上げるとともに、同時期に国内市場に押し寄せた「倭沙器」と呼ばれる日本製磁器や、大資本の日本の産業磁器メーカー、食器以外の用途で使用された陶磁の碍子、酒甕、灯盞などを通して近代の暮らしに触れました。
また、伝統的な生産方法を守ろうとした地方の窯の陶磁器や、1940年代に日本や外国の資本を入れずに誕生した杏南社(ヘンナムサ)、密陽(ミリャン)陶磁器などの磁器メーカーの存在を探り、現代の産業陶磁の根幹をなす国内企業の初期生産品を紹介しました。
第2部「帝国主義の時代、実用の陶磁から創作の陶磁へ」では、帝国主義の荒波に立ち向かって伝統陶磁を取り戻そうとする努力と意志に日本の技術や資本が浸透して生まれた20世紀の「再現青磁」が、アートとしての陶芸の誕生に与えた影響を振り返りました。
李王職美術品製作所や三和高麗焼、漢陽高麗焼の再現青磁は、陶磁を見る新しい視点〈記念品や創作品という概念〉を生み出し、このころ青磁の再現を手掛けた柳根瀅(ユ・グンヒョン)、黄仁春(ファン・インチュン)などは朝鮮美術品展覧会、大学での陶芸教育、そして解放後の韓国陶芸をリードする存在となりました。
今回の展示が、激動の時代を駆け抜けた韓国の器の価値を再発見し、時代を映す歴史的資料としての陶磁器を見つめ直す有意義な機会となれば幸いです。